福田雄一とマギーが語る、U-1グランプリのすべて —
<最終章> 2012/02/24

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[今回も、一緒にやりたいという基準で選んだ座組で]

――そうした化学反応の中に、今回、坂田聡さんも加わられるわけですよね。

福田 そうなんですよ。僕は毎回、ジョビジョバの元メンバーに一人ずつ来てもらうのが一番の楽しみだから、坂田が来てくれてすごくうれしくて。ジョビジョバのときにああいった笑いをやっていた坂田に、ここの笑いをやらせるのが楽しみで仕方ないんです(笑)。ハセ(長谷川朝晴)に来てもらったときも楽しませてもらったし、六角に来てもらったときも楽しませてもらった。だから今回も今や北海道の労務者みたいになっちゃいましたけど…。

マギー (笑)。

福田 そんな坂田とやれるのが楽しみですね。ずっとこれまで出演を拒否され続けていただけに。case01のときからずっと誘ってはいたんですけど…。

マギー それはもう、僕と元メンバー間の戯れ言みたいなノリと本気が半分ずつ、みたいなことなんですけど。真顔で「それは絶対無理です!」みたいな話になってたわけではなく(笑)。

福田 case1のときも「出てよ」って言ったのに、「いや、それはさ、マギーちゃんと福田さんのさあ、まったくジョビジョバもブラボーカンパニーも、背負わない感じのスタンスでやるのがいいんだよ」と一生懸命、坂田が言ってて。

マギー 逃げようとしてね(笑)。

福田 それで次の年にcase2でハセが出てちょっと、危機感が覚えたんでしょうね。「あれ? ハセ出たか」と。でも「いやいや、ハセは出たかもしれないけど、それはたまたまだから」と言ってたら、case3に六角が出ていよいよ逃げ場がなくなって。もう順番で来ちゃってるからね(笑)。

マギー でも、解散したバンドが久しぶりに再結成したり、ツアーで元メンバーのベースをつれてきました、みたいことってあるじゃないですか。そういうときにインタビューで「やっぱり出す音が違う、しっくりくるんだよね」みたいなことを言ってるのを見ると、プロがスコア通りに演奏してるんだから、そんな違いって本当にあるのかなあ? とずっと思っていたんですよ。でもハセや六角もそうなんだけど、この間、坂田とちょっとしたコメント映像を収録したら、そのときに、なんだかマギーという人が坂田の隣にいることに、しっくり来ている感じがあった。

福田 (笑)。

マギー 気持ち的にもしっくりきているけど、俺の存在的にもしっくりきてるぞ、みたいな(笑)。だからたかだか10年間ではありますけど、一緒にやってきた同士だから、という部分がどこかあるんでしょうね。まあ単純に、ハセも六角もそうですけど、今の彼らの活動を見て一緒にやりたいと思ったんですよ。 坂田も『アウトレイジ』という映画で彼がいい仕事をしているのを観て、あまりにもうれしくなって電話しちゃったくらいで(笑)。そうやっていい仕事をしている彼の舞台での面白さ、「坂田聡、ここにあり!」というのをね、往年のファンの方々にも初めてご覧になる方にも「どうですこいつ! 昔の仲間ですねん」ということで紹介したいというのもあるし。だからcase04ではガッ! と勢いよくやってほしいですね。

福田 忘れもしない、僕が一番最初に観たジョビジョバのライブで、一番最初に登場したのが坂田だったんですよ。テンション高橋という役だったと思うんだけど(笑)。そのときの坂田が輝いて見えたんだよね。

マギー 赤い階段から降りてくるやつでしょ。

福田 「これがジョビジョバの坂田かー!」という感じで観ていたから、すごく印象が強くて。だからすごく楽しみでして。

マギー (笑)。長谷川とかも最初に声をかけたときは断られましたし。坂田がしぶってたのも、みんなどこかで池谷さんでいうところの十八番の刀、あれをジョビジョバ以降は封印して頑張って行こうという気持ちがあったんだと思う。だから「あの刀をもう一回出して」と言われても「いや、もうあの刀はしまってるんですよ」ということになっちゃう。だから仮に福田さんがいなくて、僕とハセの二人でなんかやろうぜ、ということだったら「じゃあ、あの刀は封印したままでやろう」ということになっていたかもしれない。だけどU-1では、福田さんがとにかくあの刀を観たがるから…(笑)。

福田 そうそう(笑)。だから僕、最初に言いますからね。「あの刀出してよ〜」って。「あれ観たいんだよ〜」って。だから来年の公演のオープニングは、えらくテンションが高いことになると思う。

マギー スペースジョークから始まってね(笑)。

福田 宇宙戦艦ヤマトの司令塔みたいなところに、テンション高橋がいるという絵が見えてるから(笑)。

マギー だから坂田もスチール撮影のときにね「福田さんがいるから緊張しなくていいんだよね」って冗談半分マジ半分で言っていたけど。やっぱり元メンバーたちにとって、このユニットに福田さんがいるということは大きい。

福田 稽古場に来て初めて、僕がいることの効果を漢方薬が効くようにジワジワわかってくるんだよね。

マギー だってcase02のときに、ハセを口説き落としたときの最後の一言が…。

福田 僕の「ハセ、大丈夫だ。俺がいるんだ」という一言だったからね(笑)。

マギー ただ僕としてはそういう反応を見ると、「かつての日々はいったい、どんだけ悪夢だったんだよ!」と思わないでもない(笑)。

福田 (笑)。でも結果的に、ハセも楽しんで帰ってくれたじゃない。

マギー 「あんなにやさしいマギーは初めて見た」って言ってたね。「ちゃんと人として扱ってくれた」って。

福田 (笑)。ただ僕から見ていたら、メンバーを呼んだときの、あ、昔こんな感じでやってたのかな、と関係性が見えるのも、1ファンだからうれしいんですよ。普通は絶対に見れないインサイドの部分が見られるから。だからcase02からジョビジョバの元メンバーに来てもらえるようになったのは、僕にとってすごい喜び。

――まあ、かつて十八番だった刀をここで抜いたとしても、また違った新たなものになっているかもしれないわけですからね。

マギー まあ、衰えてるよね(笑)。

――えっ、そっち方向の変化ですか(笑)。

福田 でもその衰えた感じがまた、面白いんですよ。だから本当は僕は衰えたジョビジョバが観たくて仕方ない(笑)。あの全員が衰えてる感じというのは絶対に面白いはずなんですよ。だから僕はジョビジョバの復活公演にプロデューサーとして立ちますよ。ちゃんとプロデューサーとしてお金を集めて、責任をもって青山円形劇場でやりますから。

マギー 円形劇場で!?(笑)。

福田 『monkey circle 2』として。

マギー ああ、なるほどね(笑)。

――今後についての展望もお話しいただいたところで(笑)、そろそろこの対談も終了というところですが、この他になにか話しておきたいことはないですか?

福田 そうですね…。U-1グランプリはコント集ですから、本当に気楽に見に来ていただければと思っています。寄席に行くような感じでね。

マギー 僕はね、最近本当にツイッターとかのレビューを見て、その答え合わせをしに来ているような人が多いって思うんですよ。なんか評判の確認だけしているような。

福田 ああ。あれってなにが楽しいんだろうと思うよね。

マギー あと、ネットやツイッターが普及したせいか一人でいらっしゃるお客様が多いんですね。昔は誘われて行ったら、誘われたほうがはまった、みたいなことが結構あったんですよね。でも今はそこがわずらわしいから、一人で行って感想はツイッターにつぶやいて、という世の中になっていて。そのほうがストレスがなくていいということなんでしょうけど、われわれがやっているこのU-1グランプリはぜひ、無理してでも友達を誘っていただきたい。

福田 そうだね。誘ってもらって、観たあとはお酒でも飲みながらあれは面白かった、あるいは面白くなかったと、話してもらえたらうれしいよね。

マギー 連れて行った人から「ありがとう誘ってくれて」と言ってもらえるものにしますのでね。ぜひ誘って連れ立って来ていただけたらと思います。


終わり  (インタビュー・文 ; 小杉厚)
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